いつか福岡を出たい

自分の故郷はどこなんだろう？



転勤族だった父にくっついて、20年前まで私たち家族は短いスパンで各地を転々としていました。


長崎、大坂、福岡、栃木、また福岡…


私は4人兄弟の末っ子だったから、物心のついた栃木県黒磯市（現：那須塩原市）以外の家のことはうすらぼんやりとしか覚えていないのだけど。



もう20年も福岡で暮らしているけれど、ずっと長いこと、福岡県は私のホームタウンではなかった。



栃木のあの抜けるような青い空、満点の星空は福岡にはなかったし、かまくらが作れるほどの雪も降らない。

車で行ける距離に天然の露天風呂があって、週末の夜は家族で出かけていって、買ってもらった冷たいジュースを兄弟と回し飲みしながら星空を眺めて温泉に浸かった。

見渡す限り田圃が広がっていて、家もまばらに建っているようなところだったから、毎朝上級生も下級生も集まって、一緒になって学校に通った。

家の近くには雑木林があって、材木置き場で秘密基地ごっこ、
晴れた日には那須高原につれていってもらって、スケッチブックに風景を描いた。

夏休みは家族で大きなワゴンに乗って、長崎のばあちゃんちまで一昼夜の長いドライブをして。遠くに見える夜の東京タワーに嬉しくなって。


そういえば、初恋は栃木の同級生の男の子だったな。



もうずっと長いこと、福岡で暮らしているけれど、たまにやっぱり、違うな、と思う。



栃木に帰りたいと思うことはなくなったけど、免許をとってひとりでいろんなところに出かけるようになってから、ずっと自分の帰る場所を探しているような気がする。



九州、四国、中国、関西、関東。

アルトで行けた範囲だけ…だけど、知らない土地はとても魅力的に見えた。


いつか福岡を出たい。たぶん死に場所を探してるんだろう。

福岡は思い入れもあるから、仮にこの土地を離れたとしてもまた戻ってくるのかもしれないけれど。


年齢を重ねて、私が最期を迎えるその土地は、いったいどこなんだろう。




そこが私の心の故郷になるだろうか。