2014年11月20日木曜日

むかしのはなし

同性である女の子に、身体を求められたことが、ある。





高校時代。
強くて、弱い子だった。

同じ教室になることは無かったけれど、3年間を共に過ごして、徐々に仲良くなっていった。


賢くて正しく、優しく孤高で、美しい子だった。

すらりとした長い手足に、華奢な肩。白い肌にはストレートのロングヘアがよく似合っていた。




彼女にはひとつだけ、足りないものがあって。
深く尋ねることはしなかったけれど、その頃の彼女の心には、深い闇があった。

たかだか18歳の女の子が抱えるには、大きな闇があった。



彼女はいつの間にか、「守るべき存在」になっていて。
彼女もそれを望んでくれていた。

けど、私にはどうしても彼女の心の隙間は埋めてあげられなくて。

女である私には、男性からの愛情を求める彼女の要求には応えられなかった。




純粋な彼女を精神的にも身体的にも傷つけた、「異性」という存在は
彼女が強く拒絶し、そして求めたものだった。


窓から射す月明かりの下、一糸纏わぬ姿でその美しい身体を寄せてきた彼女が、泣きながら私を求めてくる。

けれど、
本当に彼女が必要としていたのは友情じゃなく。

彼女の総てを包み込む永遠の愛情だったから。




鎖骨の下に走る痛々しい傷跡を指で撫でて、
彼女の口づけを受けながら、ただ慰める外に無かった。






どんなことがあったって、彼女は彼女だ。


彼女を傷つけて良い理由を持った人間など、どこにも存在しないのに。


ただ、弱かった。
それだけで彼女は傷つけられて、彼女自身も自らを傷つけるに至った。





どうしてもっと、優しい世界に産まれてこれなかったのかな。

どうして、もっと優しい世界で在れないのかな。






私の今をつくってる、

むかしのはなし。

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